おたくのテクノ

ピアノ男(notピアノ弾き)のブログ

Buka-bukaan(インドネシア語版・恋のマイアヒ)和訳

はじめに

本記事および邦訳は、2020/7/16にトマソンスタジオより放送した番組「HUNTER LAGU INDONESIA」の内容を基に再構成し、補足するものである。

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アーカイブが視聴可能となっているため、よければ視聴頂きたい。

原曲版 恋のマイアヒについて

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恋のマイアヒ(原題:Dragostea Din Tei)はモルドバ出身の音楽グループ・O-ZONEによって2003年にリリースされた、ルーマニア語の楽曲である。

本楽曲はルーマニア国内はもちろんのこと、全世界的に大ヒットし、「マイヤヒおやじ」や「のまのまイェイ」に代表される空耳など様々なムーブメントやミームも発生した。その人気は衰えることがなく、O-ZONEメンバーのDan Balanが「Numa Numa 2」という2018年版マイアヒをリリースしたり、ゼスプリアゲリシャスをキーワードにマイアヒ替え歌を2019年CMに起用したりしている。

このように大ヒットした楽曲は、何者かによってカバーソングが作られるのが世の常であり、マイアヒは世界中で各国言語版のマイアヒ・カバーソングが作られた。余談だが日本もその例外ではなく、現在女優として活躍する瀧本美織が所属していたSweetSが「Girl's BOX 〜Best Hits Compilation Winter〜」というCD内にて日本語版マイアヒを発表しているので、入手して聞いてみてほしい。(悪名高きCCCDです)

マイアヒの歌詞の意味

マイアヒという面白ワードや空耳にばかり耳がいくこの曲、歌詞の意味を知る人はどれほどいるだろうか。

ブーム当時の先人たちが、マイアヒの和訳や考察記事を書いているので、いくつかセレクトした。参照されたい。

https://lyricstranslate.com/en/dragostea-din-tei-%E8%8F%A9%E6%8F%90%E6%A8%B9%E3%81%AE%E4%B8%8B%E3%81%AE%E6%81%8B.html 和訳

https://plaza.rakuten.co.jp/lyrique/diary/200509040001/  和訳2

https://plaza.rakuten.co.jp/lyrique/diary/200509040000/

https://blog.goo.ne.jp/saemon0114/e/6ef5bcd14f422b332d8c8be6ee40f2d9

雑にまとめると、マイアヒはちょっと複雑な心境を歌った失恋ソングである。

そもそもマイアヒのマイとは5月のこと。ルーマニアでは5月から夏で、恋が始まる季節とのことだ。タイトルのDragostea din teiは「菩提樹の下の恋」という意味だが、菩提樹は桜のごとくパッと咲いてパッと散るので、刹那的な恋のメタファー。

歌詞の内容は、
ピカソという男が、もうフラれたような関係の好きピに電話するのだが、相手が出る前に切っちゃった。でもかけ直してくれってわけじゃない、無理に俺と話してとは言わない。君はもう俺を置いて、行っちゃうんだろ、儚い愛だよなぁ。。

といった具合に、ちょっと未練がましいウジウジした感じにもとれる失恋ソングである。

各国の言葉で歌われたマイアヒは必ずしもこの通りの歌詞とはなっていない。

例えば瀧本美織らによるマイアヒでは、女性が主体となっており、「恋のホノオ メラ☆メラ 燃える太陽」「今すぐ携帯に 直Connect Precious talk したいのに」などというギラギラした言葉遣いで、早くダーリンに会いたいといった趣旨のことを歌っている。

シンガポール出身歌手・郭美美による中国語版マイアヒ「不怕不怕」に至っては、もう私は何も怖くない、ゴキブリを見ても怖くない、といったことを歌っている。

Barakatak / Buka bukaan

さて、本記事のメインはインドネシア語版マイアヒの和訳である。恐らくインドネシアにも多種多様なマイアヒが存在する可能性があるが、ここではインドネシア語カバーとして最もメジャーと思われる、BarakatakBuka bukaanを和訳する。

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Barakatakについて

Barakatakは80年代後半にポップ・スンダ(スンダ地方の大衆音楽)の歌手グループとして結成、90年代にはインドネシア流のハウスミュージックに音楽スタイルを転換し、そのスタイルの音楽において代表的な存在になった。その後およそ20年ほどシーンから遠ざかっていたが、2018年に再結成し、過去楽曲の再録版をデジタルリリースしたり、ライブを行ったりしている。

(上記は http://yesnowave.com/artists/barakatak/ に記載のプロフィールを参考にした。)

最近はBarakatakの人気楽曲「Bergoyang Lagi」のコロナバージョン(???)である「Corona Bergoyang Lagi」を発表したりと、2020年の現在も精力的に活動しているようである。

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メンバーは現在、Aam・Didi・Hana・Yayatの4名。

Hanaは女性ボーカルで、初期の頃はいたり居なかったりして立ち位置がよく分からなかった(昔は臨時メンバー的な存在だった?)

作曲を主に行っているのは恐らくAamで、自身のYoutubeチャンネルによくAamの新曲?をアップロードしている。

 

和訳を手伝って頂いた盛先生によれば、インドネシアの友人にBarakatakについて聞いたところ「なぜ今これを?古いアーティストだよ」「とにかく出せば売れるようなアーティストだった」とのことで、当時はかなり人気であったことがうかがえる。

 

また、インドネシアの高速ダンスミュージック「FUNKOT」では、いわゆるインドネシアの演歌「Dangdut」のRemixがよく制作されるが、そのルーツの一つではないか?とも言われている。FUNKOTやインドネシアのハウスミュージックの成り立ちについては、次のブログが詳しいので参考にして頂きたい。

akifunkotszakifunkotsz.hatenablog.com

 

Buka Bukaanについて

英語版wikipediaによると、リリース日は2005年。Akurama Recordsからカセットなどの媒体でリリースされた。Akurama Recordsは最近spotifyなどのサブスクで過去リリースを配信していたりするので、興味があればチェックしてもらいたい。

PVも時代やインドネシア感を感じさせるというか、謎の3D空撮や、どう考えてもインドネシアのものではない「エッフェル塔」、とにかく使える技術は使いまくろうと言わんばかりの謎エフェクト、とにかく見ていて飽きない。

 

タイトルの「Buka Bukaan」だが、Bukaは「開ける」といった意味がある。同じ言葉を繰り返すことで、その言葉を強調したり、複数のものにしたりする効果がある。buka2an、といったように2をつけて繰り返しを示すことは多々ある。-anは接尾辞で、コレを付けることにより動詞を名詞にするなどといった効果があるが、詳細な文法事項についてはここでは触れない。

とにかくOpenといった意味合いがあるが、このタイトルが実際の所何を意味するのかは、和訳とともに解説したい。

和訳(意訳)

Hallo sayang Apakah kabarmu?
ハロー、ハニー、最近どう?

(Hanaパート)
Yang lama gak ketemu kini jumpa lagi
長いこと会ってなかったね、また会えたね
(Hanaパートここまで)

Pa kabar? denganmu
最近どうなの?
Rindukah kau padaku
まだ俺のこと想ってる?
Eh kok ketemu lagi, Apa aku ini mimpi
また会えたけど、これは夢なのか?

 

Kalau boleh jujur padamu ingin pelukan terus buka2an
正直言って、抱き合うというか、bukabukaanしたい(ぶっちゃけヤりたい)

Tapi aku takut bokapmu yang sangarnya kayak preman
でも、俺は君の鬼みたいなお父さんが怖い

Pengennya sih buka2an tapi sekarang jangan buka2an
もうbukabukaanしたい、でも今はbukabukaanはダメ

Kalo kamu sudah ga tahan kita kawin bulan depan
もし我慢できないんだったら、俺たち来月結婚しよう(そしてbukabukaanしよう)

解説

マイアヒ同様恋の歌ではあるが、原曲とは異なり、長いこと会ってなかった好きピと会って、はやくヤりたいという、なかなかとんでもない歌であるということが分かった。

和訳でも結局bukabukaanをbukabukaanと書いたが、「はだけさせる」とか「ご開帳」ってことで、つまるところエッチの隠喩なのであった。

PVに出てきた謎のエッフェル塔も、実は男性器のメタファーである可能性がある。

とはいえあまりにも露骨な表現は避けられていて、大人が聞けば分かる、といった様子はイスラム教が大多数を占めるお国柄ゆえなのかもしれない。(別にイスラム文化圏じゃなくてもそういう曲はよくあるけど)

前述のCorona Bergoyang Lagiなどからも分かる通り、結構おちゃらけたノリというか、コミックソング的なノリなのかもしれない。Barakatakは結構そういう曲が多いようだ。

 

このような歌詞をO-ZONEサイドが許可したのかは正直分からない。権利関係がどうなっているのか(実は勝手にやってたりするのか)、気になるところだ。

謝辞

Barakatak / Buka bukaanの和訳にあたり、インドネシア語講師・盛先生の協力を受けました。また、記事の元となる企画「HUNTER LAGU INDONESIA」は関西の有志によって運営されている配信スタジオ「トマソンスタジオ」及び関係者の協力により放送されました。各人に対し感謝を申し上げます。