おたくのテクノ

ピアノ男(notピアノ弾き)のブログ

ブラックフライデー買ってしもたもの&買わなかったもの2024

いつもあんまり買わないつもりでいるのに、結局今年も色々買ってしまいました。投稿時点ではまだブラックフライデー当日になっていないので、参考になるかもしれないしならないかもしれません。価格は購入時のもので、特にSONICWIRE経由での購入品は日によって若干の変動があるようです。

買ったもの

Soothe2 (209USD→139USD)

oeksound.com

周りがSoothe2無しには生きていけなくなったとよく言っている気がするし、余計な帯域をカットするみたいなやつ絶妙にめんどくさ難しい気がするので買ってしまった。特にボーカルの処理とかめっちゃ使えるんだろうなぁ。ボーカルが入ってくる仕事がたま〜〜にあるが、自分自身がボーカル曲を作ることはそんなに無いので追求する気にもならず、これで楽できるなら、ぐらいのノリ。

 STEAMPUNK MECHANICAL SOUND EFFECTS (3,553円→2,487円)

sonicwire.com

機械がガチャガチャ言ってる音コレクション。最近メカの音を入れたくなることが多いのだが、こういうのは意外と自炊するのがめんどくさいことに気づいて、なら一つ持っておくかということで。正直、このサンプルパックの発売元のBLUEZONEが公式HPで無料配布してるやつで十分な気もする。

JP-8000 Eternal (3,146円→1,573円)

sonicwire.com

JP-8000のパッチコレクション。前提としてハードウェアのRolandのJP-8000&8080をコントロール・パッチ管理できる「Roland JP-80x0 Editor and Librarian」というプラグインがあって、それを使うことでJP-8000にこのコレクション内のパッチを読み込むことができる。

Sandstormとか、Out of the blueとかそういうトランスの名曲の音を再現したパッチが入っているのだが、どれぐらい似てるのか正直よくわからない...けど似てると思う。Sandstormはめっちゃ似てると思った。右にパンが寄っててめんどくさかった。

話がそれるが、Roland JP-80x0 Editor and Librarian自体が幾分かバグがあるっぽい上に、ベンダーのAURA Pluginsのサポートがワンオペかつ体調が悪いらしいのか、レスポンスが遅いとか場合によってフル無視とかお世辞にも良いとは言えない状態で、AURA Pluginsの公式Discordはやや阿鼻叫喚の状態である。

最新版(24.10.23)のmac向けビルドではUIの文字が表示されないというバグがあり、サポートに聞いてなんとか手作業でフォントファイルを配置しなおすことで自分は解決したのだが、この問題について公式からの修正はないままだ。直す時間がないならせめて過去ビルドのインストーラぐらい置けば良いのにと思うのだが、できないらしい。

素材辞典Wパック(100巻パック 1・2セット) (2,980円)

https://pcshop.vector.co.jp/service/catalogue/sozaijiten/

11/28(木)まで。たぶんブラックフライデーとはあんまり関係なくて、定期的にこの値段になってるらしい。けど一応ブラックフライデーの気持ちで買ったので掲載。

素材辞典というのは今や古典の画像素材集で、背景とか人物とかテクスチャとかの画像素材が入っているシリーズ。特に人物とか見覚えのある素材が結構入っていると思う。かつてCD-ROMで売っていたのを100巻x2ぶんまとめてダウンロード販売している感じのようだ。

どうやらスーパーマリオ64などの名作ゲームもこの素材集からテクスチャを使っているそうで、どのテクスチャがどの素材集のものなのかを特定するコミュニティがあり、自分はそこから知った。

古典なので素材は72dpi(640×480pixels)JPEGである。今この解像度でチラシとかに使えることはあまり無い気がするが、90's〜00's初頭のグラフィックデザインやWebデザインをするのにおいて、ホームページビルダーの素材と並ぶ必須素材集な気がする。どうせ自分のビジュアルの興味なんて当分その辺りから更新される気がしないので、もう全部にこれを使う勢いでいきたい。

諦めたもの

Warner Bros Sound Effects Library (495USD→248USD)

Warner Bros. Sound Effects Library | Stock Sound Effects | Sound Ideas

ワーナー製の音声素材集。ワーナーのカートゥーンアニメに使われてる音が入っている。めっちゃほしいのだが計算したら11/26時点で38,137円ということがわかり、円安を恨みながら諦めた。同じ版元から他にもディズニーとか20thFoxとかの音声素材集が出てるのだが、ひよった。というか買って使うかどうかも微妙に分からない。欲しいなら得かもしれない

Antares Auto-tune Pro 11 (69,850円→34,925円)

sonicwire.com

もはや説明不要である。ボーカル案件でピッチ補正プラグイン使うことがあって、持ってて良いかなーと思いつつ、ボーカル案件もそんな頻繁にあるわけじゃないし、自分もラッパーとかじゃないのでやめた。あったら遊ぶけど、遊ぶために買うほどじゃない気がする。自分がラッパーとかだったら買ってたと思う。いつもはWaves Tune Real-Time使っています。

BLUEZONEのその他サンプルパック諸々 (30%OFF)

欲しいんだけど買いすぎても手に余る気がしたので断念

物体

もはやいま安く欲しい物体となると中古ハードウェアぐらいしかない。あとTR-08とか

ブラックフライデーまで待てなかったもの

Nepheton2 (119EUR→59EUR)

d16.pl

909クローンのDrumazon2で有名なd16 groupが出してる808クローン。Drumazonの使い勝手が結構よくてずっと使っていて、最近は808の気持ちになったので別の安売りタイミングで購入。ソフトウェアの808クローン・909クローンは正直ここので十分な気がしています。

内臓のシーケンサから鳴らすでもDAWMIDIから鳴らすでもいけるし、なんならシーケンサで作ったリズムパターンをD&DでDAWMIDIクリップとして持ってけるのは最高。

各種エフェクトも内蔵してて、エフェクト通過後のまとまった音をそのままDAWに流すもよし。各ドラムの音をパラでDAWに流すのも可能。あとプリセットが既に結構使えるのが多い。

chipsynth SFC (39.95USD→19.98USD)

www.plogue.com

スーファミの音が鳴らせるVSTスーファミの音が鳴らせる。ストリングスや木琴の音が心地いいということはスーパードンキーコングのBGMが証明していると思う。最近Drumazonに並ぶぐらい使っています。

KORG Collection - TRITON (27,390円→16,390円)

https://korg.shop/software/korg-collection-series/single-products/korg-collection-triton.html

別のセール時にKORG Collection 5にアップグレードする形で購入。見ての通りKORGの名機TRITONを再現したプラグイン。90〜00'sのノリを取り込みたいならM1に匹敵するぐらい必須だと思います。本当はハードのモジュールがほしいけど、そんなあるもんじゃないしメンドくさいのでいってしまった

雑感

年々ブラックフライデーにはノレない気持ちになりながら、結局Kontakt○naなどを見ちゃってるのが情けない。もらっておきましょう!って本当に何様のつもりで書いてるんだ?来年こそは何も買わないでおきたいと思う。流石にもうこれ以上買うプラグインないでしょ!とか言いながらあるのが恐ろしい。

そろそろ車の免許取りに行こうかと思ってるので物欲をこれ以上刺激しないでほしい。お願いします。

Ableton LiveとTouchDesignerでオーディオビジュアルライブをするためのノウハウ

2024年10月12日に、SMILEVIDEO(at 阿佐ヶ谷DRIFT)というイベントでオーディオビジュアルライブをやってみました。

www.youtube.com

今後同じようなことをやろうと思った人や自分のために、技術的なノウハウや心構えなどを記録しておきます。

背景

SMILEVIDEOは簡単に言うとニコニコ動画をテーマにしたクラブイベントです。

自分は昔ニコニコ動画で音MADを作ってたのがきっかけで音楽制作を始めました。会場は映像出力が可能だったのと、オファーを頂いてから開催日までの2ヶ月ほど暇だったので、「オーディオビジュアルMADライブ」をやってみようと思い、やってみました。この頃Intel MacからApple Sillicon Macに変えたばかりで、ベンチマークノリで久々にTouchDesignerを触ってみたらサクサク動いて楽しかったので取り入れてと思った、というのもあります。

作品のアティチュード

マジでノウハウには全然関係ないので、ここは興味なかったら読み飛ばしてください。。

今回の核となる「TouchDesigner」と「音MAD」それぞれを取り巻く環境に対する自分のアティチュードを簡単に述べようと思います。

私のとても偏った見解になってしまいますが、TouchDesignerを使っていることを公言している作品はバキバキにクールな作品が多いと思います。逆にバキバキにクールな作品を狙わずともなっちゃいがちな気もします。触ってみての実感ですが、テックいビジュアルを作りやすいし、チュートリアルもそういう感じのが多いなと思いました。「クール」とか「テックい」って何だ定義しなさいと言われると言葉にしづらいのですが、Youtubeで「TouchDesigner Visual」などと検索してもらうと出てくるようなビジュアルの傾向を勝手にそう言っています。私はいかんせん直球のクールさに自信がないというか、今まで熱い気持ちで真面目に冷笑をやってきたと思ってるので、直球のクールさから逸れてTouchDesignerを使ってみようと思いました。

次に音MADの話。音MADって多分Aviutlがめちゃくちゃ主流で、他にAfterEffectsとかVegasとかPowerDirectorとかもいたりすると思うんですが、TouchDesignerを使って音MAD作ってると公言してる人をまだ見たことありませんでした。音MAD業界にもTouchDesignerが広まったら、何ならジェネラティブ音MADの流れとかできてきたらおもろいのにな〜とか思いました。

音MADには色々スタイルがあるんですが、近年よく見るのはバチバチにAviutlとかを使いこなしプロ同然の編集技術を盛り込んで構成した小気味のいい、ビジュアル的にもクオリティが高い音MAD。あるいは、逆に粗々しい編集を自覚的に取り込んだりメタにメタを重ねたハイコンテクストな音MADとかもドナルド関連でよく見る気がします。何にせよ情報量がめちゃくちゃ多いです。3秒でも目を逸らしたら、もう一回巻き戻して見なきゃという気持ちになります。基本的に数分で終わる映像だからこの情報量が成立するんだと思います。今回はクラブで40分のライブです、情報量を詰め込みすぎると絶対しんどいと思ったので、MADをやりつつもクラブVJレベルまで情報量を抑えようと心がけました。できてたかわかりませんが……。

そういうことなどを念頭に置きながらやりました。誰もやってへん音MADかつ誰もやってへんオーディオビジュアルパフォーマンスをやりたい、ということですね。それが良いことなのかは知りませんが……。

使った機材・ソフトウェア

Macbook Air 2024 M3 13inch 24GB

Ableton Live 12

TouchDesigner (Build 2023.11880)

Blender 4.2

KORG nano KONTROL Studio(MIDIコントローラ)

iD14(Audio I/F, ループバック可能かつ3ch以上の出力があることが重要)

その他映像編集ソフト(Premiere使いました)

ライブ構成

図の通りです。(わかる?)

まず荷物を多くしたくなかったのでMacbook Air一台で音声と映像をやることにしました。新しくPC買い足す金ももう無いし。。。

音はLiveから出します。40分ぶん曲を繋ぎながら並べたトラックを1つ*1、修造とか外山恒一とかいわゆる「音MAD素材」を刻んで並べたトラックを1つ、MIDIコントローラでボタン叩いたら音が鳴るサンプラートラックを1つ、そしてTDの映像とLiveの音声の同期を取るためのLTCトラックが一つ。LTCについては次の項で解説します。

映像は、40分のプリレンダ映像をまず用意しました。1280x720。画質は大して良くないですが、MADだし小箱でのプロジェクタ投影なのでヨシとしました。TouchDesigner、Premiere、Blenderを駆使して作りました。この映像を、Liveから送られてくるLTCを用いて音と同期させながら再生します。

TDAbletonを用いてエフェクトのパラメータやMIDIコントローラの値をLiveから受け取ります。これを使って、事前に用意したサンプラー用映像をサンプラーが鳴るタイミングに合わせて再生したり、ブラーなどのエフェクトをLiveのリバーブなどのエフェクトの強さに合わせてかけたりします。

なんとなく60fpsでやりたかったので60fpsで映像を準備しました。エフェクトはブラー、Bloom、JPEG風にガビガビになるやつ、Replace、などを使った4種類ほど用意しましたが、全部ONにした状態でも60fpsをキープできてました。わりとシンプルなので、エフェクトのリッチさ、映像の解像度次第ではfps下がるでしょう。

上の動画ではプリレンダ部分だけを載せています、撮り直すのめんどくさいのでまたもしリアルタイムでやる機会があればということで。

TIPS

プリレンダ映像と音の同期について

この記事で最も意味のある部分はおそらくここでしょう。ここを書くためにこの記事を書いたとも言えます。

やってみるとわかるのですが、TDから再生する40分のプリレンダ映像と、Liveから再生する40分の音をピッタリ同期させるのは意外にも厄介です。

参考になるスレッドがあるので貼っておきます。

forum.derivative.ca

実装の仕方は色々あるでしょうが、大きく分けると「TDAbleton」を利用する方法と、SMPTEタイムコード、特に音声信号でタイムコードをやりとりできるLTC(Linear Timecode)を利用する方法があると言えます。

最初はTDAbletonを用いる方法でやってみましたが失敗しました。TDAbletonでは、Liveのロケータの位置や、現在の再生位置を取得することができます。ロケータの位置をビデオの長さに合わせて、現在の再生位置をビデオのフレーム位置にマッピングする処理をしてみましたが、これは数分程度の動画だと成立したのですが、40分レベルだと何故か全然合わなくなってしまいました。何に原因があるのか突き止めたかったのですが、時間切れのため諦めました。

LTCによる同期のためのネットワーク

本番ではLTCによる同期を行いました。LiveからLTCの音をAudio I/Fの余ってるチャネルに送り、そのチャネルの音をI/Fのループバック機能でTDのAudio Device In CHOPに流します。これをLTC In CHOPに接続すると再生中のフレーム値(total_frames)が得られます。このフレーム値をMovie File InのIndexにCHOP Referenceするだけです。数フレームの遅れが発生するので、Constant CHOPの値を足してオフセットもできるようにしておきます。条件によってまちまちですが、9〜10フレームほど正方向に補正するとピッタリ合いました。

問題はLTCの信号をどう生成するかです。サクッとやるならClipSMPTEというM4Lがあります。ワープマーカーやテンポの変更にも対応してくれるそうで良さそうです。使ってないので分かりませんが……

www.showsync.com

私の場合は60fpsでやりたかったのですが、ClipSMPTEは30fpsまででした。LTCを生成してくれるWebサイトなんかもあるのですが、それも30fpsまででした。あまり詳しくないのですが、そもそもSMPTEはアナログテレビ録画システム向けに開発されたもので、30fpsで動作するものを対象にしていたそうです。従来規格SMPTE ST12-1 & ST12-2では30フレーム60フィールドまでしか規定されていないとのこと。*2 SMPTE ST12-3で最大960fpsをカバーするようになったそうです。

TDでは上スレッドで言われている通り60fpsをサポートしているようです。(上スレッドではST12-1 & ST12-2は60fpsが上限でこれをサポートしてるんだろうと言っている、よく分からない)LTC Out CHOPを使うと60fpsのLTCを生成することも可能でした。ちょっとめんどくさいのですが、40分のLTCをExport Movieで.movに書き出しました(Liveはmovも読み込めるので)。それなりに待つのがダルいですね。何かいい方法あれば教えてほしいです。

正確には39分ほどですが60fpsのLTCをアップしておきます。使いたい人いたら勝手に使ってください。うるさいので気をつけてください。

https://pianoid.net/timecodeman.mov

Live上ではこのトラックを配置して、再生するだけです。当たり前ですがタイムワープには対応しておりません、ワープを切って使ってください。

動画の形式

最初はファイルがでかいのが嫌で無神経にH.264/mp4で書き出してたのですが、特にDonald Ikedaパートがガビガビすぎたのでやめました。Youtubeにアップしてる動画はh.264にしたやつなのでガビガビです。粒子が細かいやつはどうしてもh.264と相性が悪いです。

h.264のDonald Ikedaパート

ProResのDonald Ikedaパート

最終的にApple ProResで書き出しました。ProResにもHQとかLTとかありますが、422 LTを使いました。どうせ1280x720だからいいやという感じです。それでも25GBぐらいあったと思います。

TouchDesignerで作った色んな素材をPremiereでコンポジットするという形でプリレンダ映像を作ってたのですが、場合によってはアルファチャネル付きで素材を書き出したいこともあります。なんでかTDのExport Movieではアルファチャネル付きのProResが書き出せなさそうだったので、NotchLCというのを使いました。Hapと同じノリで使えます。逆再生したい動画素材とかは、mp4は全然ダメなのでNotchLCを使うといいと思います。

安定したライブのために

最終的に1つのtoeだけで動かすことにしましたが、堅牢性を求めるなら刻みTDなどやった方がいいと思います。今回のケースでは刻まないほうが都合が良かったので結局刻みませんでした。

qiita.com

あとは以下のブログやQiitaの内容が参考になりました。特に「必要な時だけオペレータをcookする」は必須テクニックだと思います。

moistpeace.com

qiita.com

幸い今回のライブでトラブルはありませんでしたが、音が止まったり映像が消えたりしても、やっちまった感を出さないのは大事やと思います。アッとか言わず冷静に対処しましょう。こういう演出ですよ感で乗り切るのが大事やと思います。

制作手記

8月

8月5日にニコニコが復活してくれたので素材集めができるようになってよかったです。復活しなかったらちょっとヤバかったですね、いやYoutubeがあるから大丈夫か?

まずは音MADの音を作りつつ(時には曲ごと作りつつ)、並行してTouchDesignerも勉強がてら触ってました。どれぐらいジェネラティブにやってどれぐらいプリレンダでやるのかはまだ決めてませんでした。ただ、Macbook Air一台で音と映像をやるし、ミュージシャンとして音がブチってほしくはないので、まぁある程度はプリレンダになるだろうなと思いながら作ってました。結果的にほぼプリレンダになりました……。

TouchDesignerでVJやるなら、ジェネラティブにリアルタイムで音と合わせて映像を生成するのが一番美味しいのかもしれませんが、Apple SilliconとはいえMacbook air一台ですので。。バチバチにパフォーマンスチューニングすればどうにかなるかもしれませんが、音もやるということや自分の技術力を鑑みて、時間が足らなくなりそうな予感がしたので、大部分をプリレンダにする安全策を取りました。とはいえプリレンダもプリレンダでそれなりに大変なことはあります。

DJ風に曲を繋げていくのが普段のライブの仕方なので、映像もセクションごとに分けて短い映像素材を作るためのパッチをたくさん作ってました。一つの巨大なパッチを根気強く作るより、細かいパッチを色々作るのが飽き性の自分には向いてるみたいですね。

9月

絶対映像でめっちゃ時間使うだろうなと思ってたので、9月の中盤ぐらいには40分のMAD音源を完成させました。同時に作り溜めてた映像素材を、Premiere使いながらコンポジットしていきました。

どうしても時間が足りなくて、完全にPremiereだけで構成したパートも結構あります。無理に全部TDで作っても良くなるとは限らないし、40分尺だと手を抜くパートもないと見てる側も疲れると思います。

Liveのビデオ編集機能もかなり役立ちました。音に合わせてバンバカとカットアップするのはPremiereではかなり苦労する作業です、Liveはそれがめっちゃやりやすいです。

TDAbletonでLiveのステムの波形とかMIDI信号とかをTDに送って、Record CHOPで記録して、音に同期する映像をレンダリングしたりとかもよくやりました。修造パートとか特にそんな感じです。

 

坂東英二や生主の声などが収録されてるCDを買ったりしていました。美しいと思います。痛いニコ厨だった中学生の頃の思い出が蘇って、当時投稿した誰にも見せたくない動画とか見たりして、人生はペーソスだなと、哀愁感に浸る今日この頃です。

10月

ほどほどに苦しみながら1週間ぐらい前に40分のプリレンダを完成させました。そこから急いで音・映像同期システムやリアルタイムパフォーマンスシステムを組んだりしてました。短期間で最低限のものはできちゃうのがTDのいいところだと思います。

今回のシステムはPENIS(Piaman Entertainment Nerd Intelligence System)と名付けました。PENISに興味がある方いましたら、是非連絡しないでください。

ライブ当日

HDMIケーブルの長さが足りないことに出番直前で気づいて転換に少し時間をとってしまったなどはありましたが、大きなトラブルはなくライブできました。みなさんいい反応をしてくれたのでよかったです。

参考にした本

www.kinejunshop.com

リンクは改訂二版ですが改訂版のほう買いました。買ったばかりなのに改訂二版が出てくやしい!

映像ど素人なので、読んでみるかと思って途中まで読みました。富野作品を正直見たことがないですが。アニメや映画みたいなコンテを描くタイプの映像向けの話が中心なので、VJの参考に全てがなるわけではないですが、勉強なりました。

madoken.jp

最近の個人的なテーマで窓です。YKKのパートなんかモロに影響出てますね。ニコニコとかYoutube見るのって窓から遠い景色を眺めてるようなもんですからね、ノウハウには全然関係ないですが面白いです。

さいごに

2ヶ月まるまる、仕事以外の時間をこれに費やしたので苦しかったですが、やってよかったと思います。TDを扱う能力もそこそこ伸びた気がします。

でもこの先MADは作らないと思います。一介のMAD作者としての集大成ということで、再上演はアリかもしれませんが新規でMADをやらせないようお願いします!自分で勝手にやっときながら何やって話ですが!

今、もうMADみたいな混沌さ・トバし具合ってトレンドすぎるので自分がやらなくてもいい気がするし、ニコニコ時代のコンテンツをノスタルジー的に消費しつづける作風にもなりたくないと思うので、今後は真面目に真面目な映像を作っていけたらと思います。

*1:2トラックだが1グループにしたので1つとする

*2:https://www.jstage.jst.go.jp/article/itetr/40.17/0/40.17_5/_pdf/-char/ja

Ableton Liveでビデオ編集するときの小Tips

Ableton Liveは動画ファイルをD&Dすると動画を読み込むことができる。 ビデオを使用する — Ableton Reference Manual Version 11 | Ableton

できることは正直そんなになくて、切り刻んだりとか再生速度をテンポに合わせるとか以外のことはできない(リバースもできない)。ただ、「切り刻んだりとか再生速度をテンポに合わせる」ことに関して、Liveの操作系統を活用できるので、かつての音MADのような音楽にピッタリ同期した映像を手早く作ることができる。

この点、Premiereは結構めんどくさい。AE、Davinci Resolveは知らない……。WindowsだとVegasがLiveよりいい感じだった気がする?けどMacユーザなので使えない。

さて、いろんな動画素材を使って編集しようとするとたまに困ることがある。プロジェクト内で異なる解像度の動画を使うと、例えば解像度が低いほうの動画が変な位置に勝手に配置されてしまったりすることがあるのだ。この辺りの挙動が正直よく分からない。

明示的に解像度を指定すれば、その解像度に合うようにいい感じにビデオ素材をリサイズしてくれる、みたいな機能があればありがたいのだが、まぁ本筋じゃないしそんな機能は追加されることないんだろう。

なので、ffmpegで素材を一括でリサイズする。今回はとりあえず1280x720にリサイズするようにした。

パターン2: 縦幅に動画の大きさを合わせる。横幅が足りない分は両側を黒で埋める ffmpeg -i input.mp4 -vf "scale=-1:720, pad=1280:720:(1280-iw)/2:0" -c:a copy output.mp4

パターン2: 横幅に動画の大きさを合わせる。はみ出た分はクロップ ffmpeg -i input.mp4 -vf "scale=1280:-1, crop=1280:720" -c:a copy output.mp4

他の解像度にしたい場合は1280, 720の数値をそれぞれ変えたらいい。4:3を16:9にリサイズするパターンしかやってないので、これ以外のアスペクト比の時にうまく動くか(特に縦長動画)は確かめてない。chatGPTに聞いたのでchatGPTに聞いてください

~2024/04読書録、「陳腐なEDM」について等

読み始めた本

トーマス・S・マラニー+クリストファー・レア(安原和見訳) - リサーチのはじめかた

学生の時に読みたかった感ある。自分が何したいのか何を作りたいのか最近分からなくなることが多くて、そしたらどっかでこれ芸術を志す若者にも読んでほしいみたいなツイートを見て、買ってみた。誰かにやらされる研究ではなく、「自分中心的研究」のアプローチを教えてくれるようなので楽しみだ。

長沼伸一郎 - 現代経済学の直観的方法

ちょうど今Kindleで買った。著者の前作「物理数学の直観的方法」は読んでて、長いあとがきに感銘は受けていた。で、最近マネーのことに悩むことが多い上に、経済のことを何も知らなすぎるなと思って買ってみた。

序文で、人文科学・自然科学についてかなり勉強してるのに経済に関しては苦手(何なら無知であることが純粋さだと信じてる)な「教養の高い非経済人」が数多く存在してて、とはいえそんなこと言ってられなくなって経済を勉強しようとすると「株で儲ける方法」みたいな、そうじゃないんだがという本ばかり、とはいえアカデミックな入門本を読もうとするとそれはそれで苦しいという人のために書いた、と言っていた。

これは完全に俺のことすぎてブチ上がってしまった(教養があると言っているわけではない)。読みます。

読んでる途中の本

友利昴 - エセ著作権事件簿

いい加減な著作権の解釈を理由に冤罪をふっかけてくる(トレパク冤罪など)のは実はSNS上だけじゃなく民事事件としても結構ある話のようなのだが、そういうケースをたくさん載せてくれている。

面白いは面白いのだが、鬼畜系とかブブカみたいなちょっとキツめの言い回しをしてくるので、そこがちょっと辛い。(そんな機会があるかはともかく)真面目な講演とかでこの本をそのままソースに引っ張ってくるのは少し厳しい

中川克志 - サウンド・アートとは何か: 音と耳に関わる現代アートの四つの系譜

サウンド・アートは時折耳にするが、そう称されているものを分析してみると、筆者曰く実はタイトルにある通り4種類の系譜があって、それらを整理・解説するみたいな本。気合が入っている。

これは本題とは関係ない話になる。私は枝葉末節を全部言いたくなってしまってオタク喋りをしてしまう傾向があるのだが、筆者もそういうタイプなのか、はたまた美学の人たちの傾向なのか、注釈がかなり多い。注釈がものすごく多いと、本にオタク喋りを感じてしまう。(だから悪いということではない。)

で、現代アートの視覚美術偏重主義ともいえる側面、とりわけ音響芸術に対して無理解な側面に怒ってる注釈があって、ブチあがった。

「...現代アートの最先端で好まれる音楽が非常に陳腐なEDMだったりする現場に何度も居合わせてきたが、なぜ、面白い音響芸術の存在を無視して、視覚美術を主たる対象として現代アート全般を語ることができるのか、という疑問を私は抱き続けてきた。...」 (pp.19 注釈13一部抜粋)

筆者の言いたい話とは多分かなり逸れるが、この点はなかなか私としては難しいものがある。確かに自分もそういうシーンを何度かみた事がある。最近だと筆者の言う「陳腐なEDM」に該当する所は「ヒップホップ」とかだろうか。これが本当に無視してて(気づいてなくて)「陳腐なEDM」を好んでるのだったら、まぁやるせない気持ちになるというかそれを通り越して笑うしかないのだが、実は面白い音響芸術が面白くなくて、自覚的にというか、アイロニカルに「陳腐なEDM」を選んでるのであれば、これは結構身につまされる話かもしれない。

これと裏返しの話で、「陳腐なEDM」ではなく「面白い音響芸術」が仮に全体の傾向としてよく選ばれていたとして、でもこれが続いてたら「陳腐なEDM」がきた時にめっちゃブチあがってしまうというのもある。マニアックを極めた先の揺り戻しか。私含め一部界隈では「陳腐なEDM」に相当するもの(めちゃくちゃメジャーなJ-POPとか、商業主義すぎる曲とか)を半ば自覚的に選んで、それでブチあがってる時があると思う。で、それは自覚性が薄ければ薄いほどブチあがる。山本精一が言ってた「天然スカム/養殖スカム」にも似た話だ。

で、より困るのは、そういうアイロニカルに選択しがちなもの(その代表例はワンピースか?)というのは、実はアイロニカルに選択しなくても全然陳腐じゃない、めちゃくちゃ良いものだったりするのである。ただ、養殖スカムが天然スカムにはなれないのと同じで、アイロニカルに選択できてしまう人が天然の良さに気づいて素直な気持ちで提示しようとしても、どこか天然になりにくいのである。

 

自分は子どもの頃、ワンピースを素直な気持ちで面白いと思って見ていた(エネル編あたりで他に興味ができて脱落したが)。大人になってからは、やはりワンピースをアイロニカルな感覚で面白がっている。後に、尾田栄一郎のすごさやワンピース自体の偉大さに気づいて素直な気持ちで見ようとしているものの、やはりアイロニカルな目線は抜けないままなのである。

読み終えた本

千葉雅也 - センスの哲学

読んでる途中は、普段曲を作ったり何かしらの作品作ったりしてる自分にとって身近な話題ということもあり、そうなんだよな確かにそうだ、と納得しながら読めてたのだが、読み終えた途端何を言ってたのかかなり忘れてしまった。

以下ネタバレかも:

続きを読む

作品を説明するのは良くないことか

前回の更新から4ヶ月。ブログ以外には自分の考えている事を長文で述べる機会がないので、たまには更新しないと書き筋が衰えると思い、キーボードを叩き始める。

直近のニュース

valkneeさんに楽曲提供した「OG」が収録されている1stアルバム「Ordinary」が出ました。いいアルバムだと思います。ワンピース見すぎてスケジュールやばくなるの私も分かります。知ってか知らずか2曲目に私の中学時代からの友人であるSEKITOVAがいるのも良いですね。曲もビジュアルに合っててめっちゃ良かったです。ぜひ聴いてください。

linkco.re

ちなみに、リリース同日には宇多田ヒカルのアルバムや、ナオト・インティライミの10thアルバムも出ています⚽️

私個人も、アルバムかEPになるか分かりませんが作り始めてます。今年か来年リリースできたらいいな。今回はフィジカルリリースがメインになる予感です。

本題

最近ツイッターで流れてきた菅実花さんの「美術作品の制作と研究の関係性について─芸術実践論文(美術)の分析を通して」という論文を見た。東京藝術大学社会連携センター紀要 arts+Vol.1(2023/03/31発行)のpdfで読める。

述べられているのは藝大における博士論文の話。絵画や工芸など実技を重視するコースでは、芸術実践(作品制作)をしながら並行して学問的な研究をし、博論に仕上げるということになっているようだ。己の芸術実践を論拠に新しい知見を示すor己の芸術実践の意義を求める形態の論文(芸術実践論文)が通例のようだ。この制作と研究の関連性、その意義を明らかにするのが上論文であるが、その点についてはもうpdfを見てもらうことにしよう。このブログでは論文の論点からはズレた話をする。

さて、理工系で応用寄りの修士を出た私のケースを言うと、社会課題や先行研究群への批判的検討をもとに、新たなシステムを開発し、被験者実験などを行なってデータを取り、データを元に言える新しい知見(システムそのものの有用性・特性、実験を通じて分かったヒトの特性)を述べるというのが修士研究の大まかな流れだ。あくまでも論文がそういう流れというだけで、実態はシステムを試作してみてから先行研究をまた収集して提案システムの方向性を修正して…と行ったり来たりする部分もあるのだが。なんにせよこの修論のフローは学士でも博士でも分量が違うだけで大体が同じだと思われる。純粋数学とか理論物理とかは若干異なる部分があると思う。

この「システムの開発」の部分が作品制作に相当するように見えるかもしれないが、芸術実践の難しいところは、論文を通した言語化によって作品自体に何かしらの影響があることだろう。上論文内でもデメリットとして「論文を通して作品や制作を言語化した結果、作品が以前のものと比べて観念的で説明的になってしまう」というものが挙げられている*1。理工系の私のケースでは、システムに何らかの影響があろうが別にいいというか、システムの良し悪しは論文の結論と大方直結するが、芸術の場合はそうはいかないだろう。作品を論拠に新知見を示すパターンだろうが、作品の意義を求めるパターンだろうが、論文の結論が良いからといって芸術作品としても良いものだとはなりにくいと思われる(逆も然り)。後者のパターンは、どうやら作品発表と論文の提出の締め切りが同時期であるというスケジュールの問題で、鑑賞者の反応や批評を論拠にできない(=主観・予測で作品の見え方について書かざるを得ない)ということも強く影響しそうだが……。

 

話を逸らすが、学問的な問題に限らず、作品を言語で説明することについてをテーマに少し書きたい。

音楽のような聴覚作品にせよ絵画・彫刻などの視覚作品にせよ、作品内容について文章で説明するという瞬間がある。批評や感想文などのような他者からの説明もあれば、ステートメントやセルフライナーノーツのように作者本人が説明することもある。

ただ、作品について言語化する事に否定的な見方というものがどうもよくあるようだ。上論文でも次のようなことが語られている*2

美術大学の実技系専攻の学生の多くは、作品制作等の実技に比べて、文章を書くことを苦手としている。専攻の課題のほとんどは実技による成果のみが求められ、提出の際に言葉によるプレゼンテーションや解説文を付け足すと「作品がものとして語ることができていない。クオリティが低いことの証明になっている」と批判されることも多い。そのため、博士課程で芸術実践論文に取り組む際にも、「言葉では伝わらないから作品を制作しているのに」、「文章で説明できる作品は良いものではない」などという免罪符を用いる傾向にある。

これらに近い言説は、美大に限らず、私の周りの、アカデミズムとは関係のない所で音楽などを制作・表現をしている人たちから聞くこともある。

先にはっきり言っておくが、私のスタンスは基本的に「作者も言葉で説明する努力はして良い」というものである。その理由とともに、上の3つ言説

  • 「文章で説明できる作品は良いものではない」
  • 「言葉では伝わらないから作品を制作しているのに」
  • 「作品がものとして語ることができていない。クオリティが低いことの証明になっている」

についてサラッと語ろう。

「文章で説明できる作品は良いものではない」は、これを作家側が言うのであればハッキリ言って誤謬というか、順序が間違っていると思う。「文章で説明できない良い作品」というのは、出来上がった作品について、努力を尽くして説明を試みても、伝わりやすい文章化が困難だから作品が良く見えるのだと私は思う。コンセプトが良いことを重視する西洋現代アート的な視座ならば、文章で説明できる内容を作品で表現することの意義は、確かに薄いかもしれない。ただこの誤謬の言説は「作品が悪かったら嫌だから文章で説明しない」と言っているに等しいのではないか。判断から逃げている。悪い作品か良い作品かの決定を先送りにしているだけだと思う。説明はできなくても説明する努力はできる。もし決定されたくないのであれば、主語のでかい変な免罪符を使わずに堂々とそう言えばいいと思う。(いや、それはそれでダサく見えてしまうかもしれないが……)

「文章で説明できる作品は良いものではない」を、作家ではなく鑑賞者の目線から言ったのが「作品がものとして語ることができていない。クオリティが低いことの証明になっている」ではないか。実際、説明が雄弁だが作品の内容が伴ってないことは往々にしてあり、言われたら悔しいかもしれないが、判断から逃げなかった分、私はものとして語ることができなかった作品も判断から逃げた作品よりは評価したい(何様だ?)。

「言葉では伝わらないから作品を制作しているのに」、けど伝える努力はしてみていいと思う。作品内の言葉で伝わらないものというのは、言語で説明するには複雑すぎる概念と、視聴覚でのみ感じ取ることができる特有のリズムというのがあると思う*3。特に後者にあっては、それを言葉で伝えようとして文を書いたところで、どうせ文から読み取れるもの=作品の内容というふうに完全に一致することはないと思う。言葉で伝えるのが苦手なら尚更だ。むしろ、文章の内容をとっかかりにして作品の内容をより理解することができる可能性はないか?ステートメントというのは、そのためにもあるんじゃないのだろうか。逆に、作品が文章の伝わらなさを補填するものであってもいいのではないか(多分、多くの作家はそれを嫌がる気もするが)。

 

あくまで努力していいというだけで、敢えて出さない選択肢とか、変な伝え方をする選択肢はあって良いと思う。下手な説明をすることによって、作者としてなんとなく伝わってほしい感覚の伝達に歪みがかかってしまう(だからしない)ケースや、作者のキャラクターと作品が深く繋がっており説明行為によってキャラクターが損なわれる(よって作品の良さも損なわれる)ケースというのもある。鑑賞者の感受性にフルベットしたいので説明を省くケースもあるだろう。

感じ方は人それぞれとはいえ、作家・鑑賞者問わず影響力の大きい説明があると、良くも悪くもバイアスがかかって見方が固定されがちだ。「あ、これあの人の言ってた感想の影響受けすぎな感想だな」と思わされたことは私もあるし、私もそういうこと言う時があるだろう。

ただ、そんな意図があろうとなかろうと、説明文を一度書いてみてからそういう選択肢を取るのと、文を書く前から免罪符的にそういう選択肢を取るのとでは質が違う。文を書くプロセスもないままに作品を作って、結局実は文で全部説明できちゃうような作品だったら、どう思うか。

 

さて、こういうことを言っているが、最近の自分は説明をしすぎて悪くなってるパターンの可能性がある。うるさい人の作品を見ても、うるささがチラついてブチアガりにくい、という思いも割と理解できる。沈黙は金というやつか。でもこれは黙ってたほうがいい時もあり、その時を自分は見極めるべきだという話で、黙ってることがずっといいということもないと思う。

*1:pp.17 表9

*2:pp.9

*3:千葉雅也のセンスの哲学を最近読んでたのでリズムという言い方をした。読んでください

2023のピアノマン振り返り

振り返る時期なので、この12ヶ月を振り返る。色々大変な年でしたが、それでも振り返ることは、大切です。今回はプライベートの話は少々に、やった仕事・リリースの話メインです(覚えてないので)。

1月

私作曲の、PINKBLESS『NEVER MIND』がリリース。

big-up.style

最近はめっきりガバを作っていなかったので、ガバでお願いしたいというオーダーに答えられるか不安だったが、わりとなんとかなった。未だに無意識のうちにガバを聴いてることはある。

 

ずっと未解決状態だった、自作ROMでのPICOのペン座標取得に成功。思わぬ所に落とし穴があった。結局これ以降PICO用VJソフトを作る時間がとれず放置している。

 

DJイオさんの訃報。度々お世話になっていたし、かなりショッキング。イオさん主催のいいともレコーズのバトンは僕の所で止まっているので、早くやらないと……。

謎にオリコンニュースとかで取り上げられてたのもよくわからなかったし、これに反ワクチン主義の人々がワクチンのせいだなーと群がっていたのが大変苦しい気持ちになった。ワクチンの肯定否定どうこうじゃなくて、自分の主張に人の死を利用するのはとても頂けない。

 

2月

ピアノ男ビデオズを更新。

www.youtube.com

後に述べるコンペ応募のためだったか?ちょっと覚えてない。最近はピアノ男ビデオズの転載元の動画よりも転載を作ることのほうが多くなっている。時代とともに違法アップロードの違法アップロード的な表象(と言っていいのか?)も変わってくるわけで、これを続けると違法アップロードスタイル・アーカイブみたいなものができるのかなと思いつつ、そもそもあんまり違法視聴しなくなってきたというか、正規視聴の手段がかなり整ってきてるので、このやり方はそろそろ難しい時期に入るかも。

3月

ピアノ男ビデオズ報告書をリリース。ピアノ男ビデオズの仕組みについて調査報告書の体であけすけに記述したもの。これを出すのが果たして良かったのかはあんまりよく分からない。出さなくてよかったかもしれない。

あと水曜日のダウンタウンがこの月に、水曜日のダウンタウンをピクチャーインピクチャー形式の違法アップロード動画みたいなフォーマットで放送することをやっていた。もうこれで完全にクリシェです。

4月

岡崎ひかりのラウンジで昨年の拙作「FAKESAX」をテーマとしたイベントをありがたいことに開催して頂く。それもエイプリルフールの日に。

本当に得難い体験だった。無くなるのが心の底から残念だと思えるスペース。この後また別のイベントでひかりのラウンジに行くことがあり、ついでに観光もしたのだが、やっぱり岡崎というか、愛知は時空の流れが違うと思う。祖母が愛知に住んでいるので子供の頃は度々行くことがあったが、その時は何も違和感なく受け入れていた。しかし、物心がついてから行く愛知は一味違う。素晴らしい。岡崎のシビコで00年代初期のデジモンアヤンキーのワッペンが何の衒いもなく売ってたのがヤバかった。

5月

何も覚えてないしリリースもない

6月

アメトーーク「動画編集やってる芸人」の、終盤に出演芸人が15秒のダイジェスト動画を各々が編集して作るという企画で、フワちゃんの動画の音声をお手伝い。毎度ありがとうございます。こんなよく分からん人にずっと仕事を振ってくれてる芸能人はフワさんぐらいです。

 

横浜に引っ越し。10年住んだ京都は何もしないままアッサリと出てしまったので、また何かできることを祈る……。

7月

第1回BUG ART AWARDの一次審査に通過、セミファイナリストとなった。

bug.art

一次審査は書類審査で、自分の作品のビデオとか、ファイナリストに残った場合の展示プランとかを提出する感じ。

胡散臭いコンペもまぁ多そうな世の中、このコンペの規模感も(1_WALLが前身とはいえ)いまいち計れてなかったのだが、公開情報によると応募総数は415、うちセミファイナリストが20名なので、わりと驚いた。私はこういう書類審査にだけは何故か強い傾向がある。二次審査では、真っ当な理由で通過に至らなかったが……。

内情はまるで知らないが、審査プロセスのレポートがちゃんと公開されていたし、各選考員の審査コメントも審査後にちゃんとフィードバックくれた。最初はグランプリ受賞者には個展開催費300万のみの支給であったが、ツイッターで誰かがアーティストフィーが支給されないことについての指摘をしていたことを受けてか、支給されることになったようだ。といった所で、真摯なコンペであるように私の目には映った。

8月

KATO MASSACREに出演。

心の底から楽しくパフォーマンスできたというか、満足いった回だったと思う。忘れていたものを思い出せた。

 

映画『ミトヤマネ』の劇伴をvalkneeさんディレクションのもとで制作。プライムビデオとかでレンタル始まってるらしいので是非。

mitoyamane.jp

劇伴は初めてだったのでいい経験になった。実際に映画館で見てきたが、エンドロールに「ピアノ男」と出るとなんかやっぱおもろい。

この作品もそうだし『君たちはどう生きるか』とかもそうだが、今年は商業作品で商業作品的なあり方から反れた道を行く作品が多くリリースされていたような気がする。自分がそういうものを無意識のうちに注目してしまっているだけかもしれない。

9月

RYOKO2000でアルバム「Unknown Things」をリリース。

linkco.re

のんびりやっていたら前作から2年も経ってしまった。なかなかお互い体調や仕事のこともあって、リリースパーティはおろか通常の出演すらできてない状態だが、なんとか機会を見つけてやりたい。

10月

あんま貼るほどのものでもないが個人的に今年はこういうノリがきていた。のでDJMIXを作った。

soundcloud.com

アジアと一括りにするのも雑すぎるかと思いつつ、事実90〜00年代のユーロダンス・トランスはアジア圏の(というかアジアに限らないと思うが)多くの国のダンスミュージックに影響をもたらしていて、独自の解釈というか、消化のされ方をしている。

自分はFUNKOTなどのアジア圏のダンスミュージックが好きなのだが、好きな理由の大部分は、欧米の様式を取り入れるんだけどそっくりそのまま欧米の様式にはならない所が好きなんだと思う。それは猿真似によって産まれる薄っぺらさの時もあれば、ウェスタンポイズンには毒されないという矜持、混ぜもので新しいモノを作ろうという意志の時もある。どちらも尊い。これは各国のマイアヒカバーなどにも顕著に表れている。マイアヒに注目するのはそういう所です。マイアヒは世界の民俗資料なんです。

11月

音楽ナタリーさんから話を頂き、割れ音源に関する記事をリリース。

natalie.mu

ナードコアや音MADに始まり、ずっとぼんやり「サンプリング」「割れ」について意識があったのだが、いよいよライフワークっぽい感じになってきた。

書いてるうちに自分の中で整理がついてきたというか、点と点が繋がり始めた感じがあったので良かった。けど当分はあんまりこのテーマ書きたくないな……。結局話をもらったら書いちゃうんでしょうけど……。

12月

この月がなんだかんだ一番忙しかったかもしれない。

 

山中雪乃個展のオープニングパーティにPP-MAXMAN名義でDJ出演。

これを期にやっとDJができる感じになってきた。PP-MAXMANはアジア圏を中心に各国のダンスミュージックを再編纂・再解釈するスタイルのDJ名義です。今後はDJもやっていきたい。

 

AMCJに出演、音楽ナタリーで書いたようなトピックを中心に講演。人前でプレゼンテーションするのがものすごく久々というか、何なら他人と喋る機会も近年はすごく少なくなってきてるので、あんまり上手く話せなかった……。内容自体はナタリー時点より新しい視点も含んでいるつもりなので、また何かのタイミングで発表できればと。

 

熱海にて、しぜすべ3に出演。

本来RYOKO2000での出演だったが、都合で叶わず私単騎での出演。レジャー感覚です。日の出というものを久々に見た。

 

ミゲルさんのGOODNIGHT周年パーティに出演。

これが今年の最初で最後の、2人揃ってのRYOKO2000出演となってしまった。来年こそ頑張りたい。イベント自体は、今まで体験したことない新鮮で不思議な空間だった。

 

まとめ

美術、執筆、講演……ちょっと風呂敷広げすぎてしまった感はあった。音楽活動もそれなりにやっていた気はするけど、振り返ってみると去年と変わらず控えめに映る。

色々手を出したが結局それらは今ずっとあんまりやる気がなくなってしまっている。でも音楽だけは、一瞬やりたくねーってタイミングがあれど1ヶ月もすればDAWを触りたくなっているので、結局音楽は作りたいんだということが分かって良かった。

一方で、情報過多・加速する消費速度、生成AIの発展、広告に依存する収益モデルやサブスクの問題点、Twitterの崩壊、戦争など世界情勢悪化……これまでの音楽制作への態度を改めなければいけないと思わされる、時代の転換期にいると強く感じさせられる一年。

もはや何もわからん。何もよくわからんまま全てが過ぎ去っていった一年でもあった。来年はよく分かることを祈る。

来年の抱負

曲を色々出す、年収を上げる、親知らずを処理する、雰囲気に流されず突き進む